ホーム 違反報告フォーム 氏名 該当トピック 該当文章 エリザベスの存在を知った日。 彼女が受けた被害を、 インドネシアで起きた誘拐事件への注意勧告から知った。 最初は僕の運営する情報サイト グッナイシンガポール の読者への格好のネタだと思った。 シンガポール駐在員が起こした性犯罪なんて、 いかにもシンガポール駐在員が好む最高のトピックだ。 彼女のサイトへたどり着き、僕なりに事件の詳細をまとめたつもりだ。 予想通り、記事は多くのアクセスを稼ぎ、 それは今でもアクセス数を稼ぎ続けている。 表示回数によって広告収入が入る僕にとっては、最初は労力がかかったけれど、 それに充分以上に見合う見返りがあった。 そして何より嬉しかった、そして複雑だったのは、 僕のサイトにエリザベス自らコメントが届いた時である。 当初彼女はただのネタで、少なくとも実在の人物像がなかった。 しかしそのコメントで僕の存在に気づいてくれたこ時 これまで感じたことのない奇妙な感情が湧き上がった。 僕は秘密裏にサイト運営をしているので、 本当の僕を知っている人物は少ない。 毎日ネタ探しにSNSを一方的に追っている僕にとって、 記事にした人物と実際にコミニュケーションができたのは初めての経験だった。 そう、ただ純粋に嬉しかったのだ。 小さなそんなやり取りが。 最初は彼女は、ゴシップばかりを取り扱ってる僕のサイトで取り上げれられたことに 警告を鳴らしてきた。 こんな面白いゴシップを簡単に逃したくなかった、少なからず欲と、 この記事を消してしまえば、もうエリザベスとの接点がなくなってしまう。 そして僕はエリザベスの要望に反して記事を掲載し続けている。 体調が回復しつつあるように思えるエリザベスは、 毎日不定期にサイトに記事をアップするようになった。 そこへ誰よりも早く、 いいね!をするのが僕の密かな楽しみとなり、 1日に何度も彼女のサイトを覗いては、 更新されていないか確認し、 または過去の記事を読み進めた。 そんな彼女に新しく恋人ができたらしい記事を読んだ時、 僕はまたも不思議な感情に支配された。 いいね!が押せないのだ。 その新恋人は、僕よりはるかに大きな会社経営者で、 同じくハーフシンガポリアンだというのも、 僕の中に眠るシンガポリアンとしての自尊心をくすぐったのだろう。 簡単に言うと嫉妬してしまったのだ。 エリザベス、君の事件を誰よりも理解していて、 実際に知らずとも一番寄り添っているのは、 彼ではなく僕だよ。 そして少し楽しそうな様子のエリザベスの記事を読む度に、 僕の心は対照的に、少し陰っていくのを感じてしまうのだ。 続く。 ※このストーリーはフィクションで、登場人物は皆実在しません。 自由記入欄 (任意) Δ 0/5 (0 Reviews)